東京の国立競技場の例からもわかるように、近年は体育館やスタジアムといった大型公共施設は、脱炭素化やSDGsの観点から木材を活用して建設される事例がどんどん増えてきています。
大手ゼネコン・デベロッパーを主体に地震や火災に強い新たな木造建築技術が開発され、地域のシンボルを創る事業に積極的です。ここでは竣工予定も含む体育館などの国内の建築事例と先行する海外の事例も紹介します。
小学校は教室間の耐力壁や体育館の屋根に大断面集成材を、こども園はCLTパネル工法と在来床組工法のハイブリッドです。外層ヒノキ・内層スギのCLTパネルを開発し、手触りの良さと耐摩耗性を実現しました。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2018年3月 |
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延床面積 | 小学校:4,656.71m2、こども園:1,684.54m2 |
構造 | 小学校:木造一部RC造、こども園:木造CLT |
使用したCLT | 892.47m³ |
防耐火構造 | 45分準耐火 |
学校施設等のC L T 活用事例:内閣官房[pdf]
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/clt_seifu_torikumi8.pdf)
荒天時にも練習ができる全天候型の屋内練習走路です。走路以外に砂場や棒高跳び用突き箱も整備。木材使用量は625m3でCLTは半分程度を占め、県産材のCLTパネルを構造材とし壁や屋根の一部に利用されています。
富士ウッドストレートでは、CLTパネルを210ミリ厚の燃え代設計とすることで、準耐火構造に対応させています。これにより、CLT壁を現しにすることが可能となり、木の温かみあふれる空間を実現しています。また、全長153メートルの大きな無柱空間を確保するなど、CLTを活かしたシンボリックな建築物となっています。
参照元:国土交通省公式ホームページ(https://www.mlit.go.jp/common/001350002.pdf)
【基本情報】
竣工(予定日) | 2018年7月 |
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延床面積 | 1,409m2 |
構造 | 木造(CLT使用) |
使用したCLT | 301m³ |
防耐火構造 | 不明 |
引用元:事例一覧:文部科学省[pdf]
(https://www.mext.go.jp/content/20200327-mxt_sisetuki-000005841_5.pdf)
国立大学法人等施設整備費補助金を利用して建てられた体育館です。木造ですがCLTはキャットウォーク床に使用。大学内の体育館ですが、地域社会との連携・交流の一環として申し込めば一般利用が可能になっています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2018年12月 |
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延床面積 | 1,352m2 |
構造 | 木造(CLT使用) |
使用したCLT | 34m³ |
防耐火構造 | 不明 |
引用元:株式会社中東公式ページ
(https://chuto.jp/wood-clt/38/)
奈良県五條市にある体育館のCLT採用事例です。シダーアリーナと呼ばれており、老朽化した旧体育館に変わって建築されました。奈良の県産材が使用されており、内装はもちろん、構造部分にも積極的に木材を取り入れています。また、通常は鉄骨を採用する屋根の構造部分においても、木材を多用しているのが特徴。これにより、独特のデザインと美しい木目を持つ屋根が完成しました。なお、天井でもっとも高い部分は20mあり、木造ながらも大きな空間が確保されています。
参照元:株式会社タツミ公式ページ(https://www.tatsumi-web.com/news/506/)
【基本情報】
竣工(予定日) | 2016年4月 |
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延床面積 | 5,031m2 |
構造 | RC造+鉄骨造+木造 |
使用したCLT | 記載なし |
防耐火構造 | 記載なし |
参照元:株式会社タツミ公式ページ(https://www.tatsumi-web.com/news/506/)
引用元:隈研吾建築都市設計事務所公式ページ
(https://kkaa.co.jp/project/icu-new-physical-education-center/)
東京都三鷹市にある国際基督教大学の体育館の事例です。緩やかな曲線を描く屋根など、自然と調和する優しいデザインに仕上げられています。内部やアリーナ棟やエントランス棟など、複数の構造に分かれています。それぞれの空間に合わせ、適切な木造システムを採用しているのが特徴です。アリーナ棟は、240×360の流通木材が取り入れられ、大規模な空間を確保しています。また、エントランス棟はLVL折板構造とし、CLTの柱で支えています。
国際基督教大学新体育施設は、異なる構造や断面形状の屋根を使うなど、複雑で多様な空間構造を具現化しています。一連の構造は、採光や換気のための間口として利用されており、明るく快適な屋内環境の実現に寄与しているのが特徴。木材という物質について、複雑な構造にも容易に対応できるフレキシビリティが確認された好事例といえます。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2018年11月 |
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延床面積 | 5,930² |
構造 | 記載なし |
使用したCLT | 記載なし |
防耐火構造 | 記載なし |
引用元:CLT視察ツアー2017inUK報告書:日本CLT協会[pdf]
(http://clta.jp/wp-content/uploads/2017/08/CLTtour2017-report_v4.pdf)
イギリスのイーストアングリア大学内にある体育館です。CLTありきではなく、コスト・工期・運搬の条件に見合う建材を探した結果CLTが採用されました。施工期間は33週間で230 万ポンド(3.45億円)となっています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2011年8月 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | 不明(CLT利用) |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
引用元:CLT視察ツアー2017inUK報告書:日本CLT協会[pdf]
(http://clta.jp/wp-content/uploads/2017/08/CLTtour2017-report_v4.pdf)
イギリスにある生徒数650名の公立学校です。楕円形の建物で中央部に共用スペースがあり、それを囲むように環状に教室を配置。CLTは中心部から同心円状に配置され、高さ8.5m、18mスパンの体育館も設けられています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2010年 |
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延床面積 | 9,000m2 |
構造 | 不明(CLT利用) |
使用したCLT | 3,095m³ |
防耐火構造 | 不明 |
大空間のエントランスホールと屋内運動場があるスウェーデンの小学校。の屋根は集成材トラスで構成され、スパンは最大23m。工場で組み立てそのままの状態で運搬し、工期は入札から竣工まで28ヶ月で進めらました。
【基本情報】
竣工(予定日) | 不明 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | 木造(集成材+CLT) |
使用したCLT | 100m³ |
防耐火構造 | 不明 |
参照元:CLT視察ツアー2018inスウェーデン報告書:日本CLT協会[pdf]
(http://clta.jp/wp-content/uploads/2018/08/25317596732222fd626cd9b23ea365c3.pdf)
体育館の床に使用されることが多い素材には、主に「フローリング(木製)」と「長尺シート」があります。それぞれの素材には異なるメリットとデメリットが存在し、用途や使用環境によって適したものが選ばれます。
まず、フローリングのメリットについて説明します。
1つ目は耐久性の高さです。フローリングの表面には薄い塗装が施されており、これが床材の劣化を防ぎ、防滑性を持たせる役割を果たしています。この塗装があることで、長期間にわたり体育館の機能を維持できます。
2つ目は再生可能であることです。フローリングの表面の塗装だけを削って塗り直すことで、自然な素材感を維持しながら長期間使用することが可能です。素地まで交換する必要がないため、コスト面でも優れています。
3つ目のメリットは機能性です。複合フローリングは温度や湿度の影響を受けにくく、床暖房の設置もできます。特に、体育館は災害時の避難所としても利用されるため、暖房機能がある点は非常に有用です。
一方で、フローリングにはいくつかのデメリットもあります。
1つ目は滑りやすさです。表面の塗装が汗などの水分で滑りやすくなり、特に夏場は競技中の汗で床が滑りやすくなることがあります。これにより、バスケットボールやバドミントンなどの激しいスポーツでは、スリップによるケガのリスクが高まります。
2つ目はメンテナンスの手間がかかることです。表面の塗装が摩耗してくると、ノンスリップ性や床の保護機能が低下します。このため、定期的に床全面を研磨し、塗装を再度施す必要があります。
3つ目は水漏れによる反りや床鳴りです。長時間の水漏れや湿気により、床が反ったり、突き上げや床鳴りが発生することがあります。このような場合、補修ではなく、張り替えが必要になることもあります。
続いて、長尺シートのメリットについて見ていきます。
1つ目は柔らかさです。長尺シートは多層構造で、裏面にはクッション性のある層があります。これにより、転倒時の衝撃を和らげ、ケガのリスクを軽減します。
2つ目はグリップ性が高いことです。長尺シートは材料自体に高いグリップ性があり、表面塗装を必要としません。用途に合わせて、グリップの強さを調整できる点も大きな利点です。
3つ目はメンテナンスが容易であることです。長尺シートはフローリングのように全面的な研磨や塗装の塗り直しが必要なく、日常的なクリーニングで十分です。劣化が進んだ場合でも、ワックスの塗布だけで対処できることが多いです。
長尺シートにもデメリットがあります。
1つ目はフローリングと感覚が異なることです。長尺シートはフローリングよりも柔らかいため、衝撃を吸収しすぎてしまい、走りづらさやボールの跳ね返りが悪くなることがあります。特にフローリングに慣れているスポーツ選手にとっては、感覚が異なることがデメリットとなる場合があります。
2つ目はグリップ力が強すぎることです。グリップが効きすぎると、シューズが引っかかりやすくなり、転倒のリスクが高まることや、足への負担が増えることがあります。
3つ目は施工の難しさです。長尺シートは多層構造で厚みがあり、重量が重いため、広い空間に施工する際はフローリングよりも労力が必要です。体育館のような大規模なスペースでは、施工の手間と時間が大きな課題となります。
体育館の床材を選ぶ際には、フローリングと長尺シートのそれぞれのメリットとデメリットを考慮する必要があります。フローリングは、耐久性と自然な素材感が魅力ですが、メンテナンスや水漏れへの対策が求められます。一方、長尺シートは柔らかくグリップ性が高いため、安全性に優れますが、スポーツによっては不向きな場合もあります。
最終的には、体育館の使用目的や予算、維持管理のしやすさを考慮して、最適な素材を選ぶことが大切です。それぞれの特徴を踏まえたうえで、快適で安全なスポーツ環境を提供できる床材を選びましょう。
学校の体育館やスポーツ施設など公共性の高い建築物は自治体などと協力して進められる場合もあります。CLT木材を活用する場合は、業者によって設計から施工までワンストップで依頼できるところと、木材の調達のみというところがあります。建築計画や自社の状況に合わせて依頼先を選ぶようにしましょう。
日本を代表する樹種ヒノキの
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