我が国の森林資源の有効活用を目的として、さまざまな場所で用いられているCLT木材。ここでは、その使用事例の中から、トイレに使用されている事例を3件ピックアップして見ていきましょう。個性的なデザインの中にCLT木材がどのように使用されているかを具体的にまとめています。
仕上げと構造を兼ねて、薄板CTL構造用面材を使用した建築事例です。木材は外周全面に使用されています。木造のトイレは外観はもちろんのこと、内装も落ち着いた雰囲気でリラックスできそうです。また、同時にベンチも併設されており、トイレだけでなく休憩施設としての役割もあります。
また、軒の出を深くしたデザインが特徴的で、雨宿りもできそう。この深い軒の出はパネル端部の処理を工夫しており、デザイン性だけでなく耐久性を高めることにも一役買っています。
落ち着いたデザインの建物は、周囲の桜並木によくなじんでおり、その魅力を引き立てている印象です。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2017年4月 |
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延床面積 | 53.92m² |
構造 | 木造(壁式構造CLT利用) |
使用したCLT | 3.996m³ |
防耐火構造 | その他 |
建物を構成する壁、柱、梁などほとんどのパーツが木材でできているトイレです。天井が高く取ってあり、さらに屋根の周辺は大きめに隙間を開けているので採光にも優れています。トイレはしばしば閉塞感の強い冷たいイメージの建物になっていることがありますが、この事例では外観も内装も木材の温かみを感じられるデザインとなっています。
また、建物の側面には大きく張り出した屋根が設置してあり、日差しを避けるための休憩所としても使えるようになっています。ほかにも、車いすの人も利用できるように車いすの駐車スペースや身障者用トイレも設置してあり、CLT木材の普及はもとよりユニバーサルデザインにも対応している優れたトイレとなっています。
道の駅あわくらんどのトイレは、2018年にウッドデザイン賞を受賞しています。ウッドデザイン賞は、木の価値をデザインで再構築することを目的に、木で作られた製品や建築物、各種取組などを表彰する制度です。
道の駅あわくらんどのトイレは、CTL建築の普及啓発に取り組む産学官組織によるデザインアプローチの試みや、利用者目線に立ったCLTの使用方法を検証する取り組みが評価されました。また、今度の市場形成やニーズの収集にも寄与することが期待されています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2018年4月 |
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延床面積 | 218.04m² |
構造 | CLTパネル工法 |
使用したCLT | 123.63m³ |
防耐火構造 | その他 |
設計コンペにて選定されたCLT木材の使用事例です。CLT木材をさまざまな形で組み合わせているのデザインが特徴的な事例で、3枚の壁、傾斜と段差をつけた3枚の板で構成された屋根庇、デザインと採光を兼ね備えた壁の穴など、独創的な部分がたくさんあります。
また、CLT木材を用いている部分が非常に多いのも特徴。構造から間仕切りはもちろんのこと、ライニングまでCLT木材を用いた、まさに木の魅力を体現したかのような構成になっているのです。そのため、建物全体がまるで木の家具のような雰囲気を醸し出しています。
木テラスは、CLTが持つ特性を上手に活用している点が特徴的といえます。建物は3枚の壁で屋根を支えたシンプルな構造で、2方向の跳ね出しなどが応力で屋根パネルを支えています。一方、部材数はできる限り抑えられており、現場での建方をスピーディに終えられるよう設計されました。
建物の構造部を建てるにあたって、構造や利用する部材によっては時間がかかることも少なくありません。CLTを導入すれば、建方にかかる時間を削減できる可能性があります。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2017年3月 |
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延床面積 | 69.8m² |
構造 | CLTパネル工法 |
使用したCLT | 51.9m³ |
防耐火構造 | 22条地域/その他 |
六甲山の価値向上や環境整備を目的に、設置された公衆トイレ・休憩スペースです。自然に違和感なく溶け込むように、木の仕上げ材の色味などが上手に調整されています。設置場所は山頂エリアで、国立公園特別地域内です。
ベンチのうしろにトイレ機能のある小屋が建っています。屋根と縁を切った設計になっており、風通しが良好です。光もたっぷりと差し込みます。また、男女多目的が分けて配置される間取りが採用されています。
屋根版CLTに兵庫県産材指定のヒノキスギが採用されています。トイレ部分の外装材やベンチの建材は国産の杉です。一部には六甲山の間伐材もつかわれています。
六甲最高峰トイレは、CLTに鉄骨造を組み合わせて大きな屋根と開放的な屋根下空間を実現しています。一辺数メートルの木材パネルを、角度に変化をつけて配置することで、複数の棟を持った勾配屋根が完成します。そこへ細い鉄骨をランダムに配置し、支持部をつくり上げているのです。
このような構造を採用することで、印象的なデザインと開放的な空間を具現化しています。なお、トイレの部分は構造を切り離し、在来工法を取り入れています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 記載なし |
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延床面積 | 267.91m2 |
構造 | 鉄骨造(屋根CLTパネル),一部木造 |
使用したCLT | 記載なし |
防耐火構造 | 記載なし |
日本を代表する樹種ヒノキの
特徴と
CLT木材への活用などを紹介
誰でも快適に利用できる大阪観光トイレ「カワモ」。バリアフリートイレやオールジェンダートイレが設置されています。堂島川のほとりにある川面(かわも)をイメージし、カワモという名称になりました。デザイン性の高さが注目ポイントのひとつとなっています。ちなみに、勾配屋根は、かつて堂島川沿いに並んでいた米蔵に着想を得ています。観光客にとっての利便性にも配慮した施設です。
カワモの内装には、国産材(CLT)がたっぷり使用されています。木ならではのあたたかみや、自然のかおりを感じながら過ごすことのできる、快適な空間に仕上がっています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 記載なし |
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延床面積 | 記載なし |
構造 | 記載なし |
使用したCLT | 記載なし |
防耐火構造 | 記載なし |
日野興業(千葉県市川市)とMEC Industry(鹿児島県湧水町)が共同で、構造材および内装材の一部に国産材CLTを使用した木造トイレユニットを開発しました。MOKURESTという名称のトイレユニットで、企業敷地内のトイレを新たに増設する際に採用したり、あるいは道の駅・キャンプ・グランピング施設などへに設置したりすることも視野に入れています。
CLT木材は、住居だけでなくトイレなどの公共施設にも積極的に用いられており、今後もさまざまな場所で活用されることが期待されています。しかし、現段階ではCTL木材の扱いに熟達した業者はまだ少ない状態なので、業者の選定は慎重に行う必要があります。
業者の選定の際には、設計の段階から任せたい場合はワンストップですべての工程を行ってくれる業者を選ぶ、素材のみが欲しい場合は製材を専門とする業者を選ぶといったように、自分の目的に合致した業者を選ぶようにしましょう。また、その際には同時に見積もりを取り、複数社を比較検討するようにしましょう。
目的と用途に合わせて選ぶ
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