CLTは国が推奨していることもあり利用拡大の動きがありますが、その理由や特徴についてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこでCLT木材に関する基礎知識や他の木材との違いについて解説します。
CLTとはCross Laminated Timberの略。ひき板に繊維が直交するように接着した木質パネル材のことで直交集成板とも言います。集成材と同様に構造設計ができ中層から大規模施設の建築に幅広く利用されます。CLTパネル工法の他に軸組み工法+CLTや混構造など従来からある工法に加えられることもあります。
メリットは効率的に建築現場で利用できて工期の短縮につながること。またデザインの自由度が高く柔軟性があり森林資源の有効活用で循環型社会の実現に貢献できることです。デメリットとしては対応する施工会社やメーカーがまだ少なく、全体的に建築コストが高くなってしまうことで、今後の需要拡大で下がる可能性もあります。
CLT普及については国も後押ししており、そのための補助金・助成金制度があります。林野庁が主管のJAS構造材利用拡大事業、木質耐火部材等利用拡大事業、CLT建築実証事業や国土交通省が主管のサステナブル建築物等先導事業などがあり2021年度に実施。いずれも費用の一部を補助するもので利用条件に違いがあるので注意が必要です。
集成材とは複数の板を繊維方向をそろえて接着剤で貼り合わせた木材のことです。構造用と造作用があり、構造用は住宅の柱や梁に造作用は内装や家具などに利用されます。強度や見た目が安定し、デザイン性に優れるのがメリットです。CLTは繊維の方向が直交になるように重ね合わせる大判の厚板パネルなので集成材と構造が違います。
ひき板を繊維方向が直交するように積層接着するのがCLT。それに対しLVLは丸太を繊維方向に平行に積層接着した単板積層材、NLTはひき板をアルミ製の釘でつなぎ合わせる釘接合集成板、DLTは接着剤も釘も使用せず木ダボで接合されている積層材です。それぞれ性質や用途が異なるため、適材適所で選択することが重要です。
CLT木材は、1995年頃にオーストリアで誕生したのち、イギリス、イタリア、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどに普及します。日本に持ち込まれたのは2010年頃です。ただし、本格的な普及が始まったわけではありません。国内で本格的な普及が始まったのは、JAS(日本農林規格)が制定された2013年頃と考えられています。
CLT木材普及のきっかけとなったのが、日本農林規格の制定(2013年)です。日本農林規格は、JAS法に基づき国が定めた林産品の品質などに関する規格といえます。品質が明らかな木材への需要の高まりなどを受けて、CLT木材に関する日本農林規格が制定されました。具体的には、寸法や強度などに関する規格が定められています。
CLT木材は、ヨーロッパで開発された建築材料です。海外では、大型商業施設や高層住宅などにも用いられています。単に見た目が美しいだけでなく、RCよりも施工期間が短いなどの実績があるからです。海外での事例を受けて、日本国内でもCLT木材へ注目が集まっています。今後はCLT木材を用いた建物が増えるでしょう。
木造での大スパンは技術・設計の問題から難しいとされています。しかし、CLTを採用すれば柱を減らし、大スパンを確保することも可能です。実際にCLTパネル工法を取り入れ、18mもの大スパンを実現に取り組んでいる建築物もあります。
耐震性や断熱性、遮音性、耐久性に優れるCLTは、省エネ・創エネを実現する建物「ZEB」の建築にも活用されています。また、ZEB普及と同時に国産の木材需要を高めるため、建材や部材にCLTを採用すると、国から補助や助成金を受けられる制度があります。ZEB化を検討している方は、ぜひ概要や活用事例を知っておきましょう。
木材で出来ているCLTは雨に長時間打たれてしまえば、吸水しカビが発生するリスクも高まってしまいます。そのためカビが発生しないように撥水剤の塗布を行った方が良いでしょう。また反りによってCLTが割れるなどのリスクもあるため、反りへの対策も必要不可欠です。浸水・洪水の被害が起こり得る日本だからこそ、雨対策を講じることで強い建造物になるでしょう。
壁倍率は、建築物の耐震性や耐久性能などに影響を与えます。CLTパネルは壁倍率が高い製品も多く、3倍以上を実現しているケースも中にはあります。国土交通大臣の認定を取得した製品もあるほどで、高い強度を備えています。木造建築物は耐久性が低いと思われがちですが、CLTは適切にメンテナンスを行えば、長期にわたって耐久性を維持できる可能性があります。
CLTは壁や床・天井などに使用されるのが一般的です。しかし、屋根にCLTを取り入れることも不可能ではありません。実際に高知県香南市にある子育て支援センターでは、CLTパネルを接合することで、大きな屋根を実現しています。また、屋根への適応が可能なCLTパネルも販売されていますので、設計次第では、従来とは違ったデザインの建築物を実現できるでしょう。
LC-gate構法とは、住宅の建築において資材置き場などの確保が難しい都市部の狭小地向けに開発された構法です。間口を大きく開けることが可能であり、空間を最大限に利用できる点が魅力のひとつといえるでしょう。
CLTの中には、床に利用されているものもあります。中高層建築物においてもCLTを床材として利用している事例も出てきていますので、ぜひチェックしておくことがおすすめです。また、薄くて軽い点が特徴のCLT36という素材についても紹介します。
Xマーク(クロスマーク)とは、接合金物の規格のひとつであり、Xマーク金物はCLTパネル工法用の接合金属規格の認証を受けた金物を指します。承認を受けている金物にはさまざまなものがありますので、あらかじめどういったものがあるのかを見ていきましょう。
CLT木材は軽量でありながら非常に頑丈なので、テーブルやベンチ、棚板といった家具にも向いているでしょう。軽くて頑丈という特徴は、地震大国である日本において高い安全性を確保できるなどのメリットがあります。また、採用するデザインや木材の色によって、空間のイメージを変えることができるのもポイントです。
とはいえ、CLT木材といえば、未だに建物の骨組みに使われるイメージが強いです。以下のページでは、CLTの家具への採用事例をまとめています。
CLTの製造は、単に木材を接着するだけではなく、製材から乾燥、加工、積層までの全ての工程がコンピューター管理された工場内で行われます。また、各工程で人の目による細やかな検査も実施され、品質管理を徹底している製作所もあります。
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