CLT木材は建築・設計上でさまざまなメリットがあり現在世界中から注目が集まっています。一方でデメリットと考えられることや、注意しておきたいポイントもあります。そこで将来も見据えたメリット・デメリットを紹介します。
CLT木材は工場でパネルが作成され現場に運搬後すぐに作業に移ることができます。加工済でコンクリートにように固まるまでの養生期間も不要。作業効率がアップすることにより大規模な建物での工期が短縮できます。
凹凸のある建物などデザイン性の高い建物の建築にも柔軟に対応できます。面材のパネルを組み合わせる工法を採用するため箱型以外の建物でも自由に設計が可能。壁の開口部も柔軟に設置できるので見栄えの良さも得られます。
限りある資源を効率的に利用する循環型社会の実現に貢献できることもメリットの一つ。CLTは集成板ですので建材にあまり向かまい木材も有効活用が可能です。また適度な木材の伐採と使用により山林の保全にもなります。
CLT木材は地震や火災にも強いというメリットを持っています。鉄筋コンクリート造よりも非常にかるいという木材ならではの特徴もあり揺れにも強いという性質があるでしょう。国土交通省国土技術政策総合研究所などのクロス・ラミネイティド・ティンバーによる3階建て実大試験体の振動実験では、スギCLTパネルを使用。3階建ての建物ですが、屋上にプラス2階分の積載をし、5階建ての想定で実験を実施しています。加振は試験体の長辺方向の1方向のみで、JMA神戸NS波の揺れを行ったところ、目立った損傷は見られなかったという結果となり、十分な耐震安全性能があると認められました。
さらに木材は表面自体が燃えるにもかかわらず、燃え抜けにくいという性質もあり、厚さ90mmのCLT材は燃えきれるまでに1時間以上かかるという報告も。つまり万が一、火災が発生したとしても避難を行うのに十分な時間を確保しやすいでしょう。
熱伝導率は木材の方がコンクリートよりも1/12程度と言われており、非常に断熱性が高い資材と言われています。厚さ10㎝のCLT材と厚さ1.2mのコンクリートが同じ断熱性能という報告も。たとえば隣の部屋で火災が発生しても、15cmのCLTパネルを使用していれば、手で触ったとしても熱を感じにくい構造と言えるでしょう。
CLT材を活用することで、SDGsに活用できるというメリットがあります。地域材を活用することで、健全な森林を維持することにつながり、土砂災害を防ぐ、海洋環境の維持などにも貢献できるでしょう。また資源としてのサステナブルにもなり、建物の解体もしやすく、解体後は家具・ベンチなどで幅広く再利用が可能です。国産材としての需要も高まるため地方創生に役立つという一面も。地域の雇用機会を創出し、関連産業の活性化にも期待できるでしょう。
日本を代表する樹種ヒノキの
特徴と
CLT木材への活用などを紹介
CLTパネル工法のデメリットとして考えられるのは建築コストが高いことです。他の工法よりも取引量が少ないため材料コストが高く、対応する建築士や施工会社も少ないためコストが全体的に上がってしまうことがあります。
現在、CLT木材は加工できる工場が限られてしまうこともありコスト高になりがちですが、林野庁などが構造材普及のために補助金も設けており国が推進する事業の一つなので今後は需要も拡大していくことが考えられます。
それに伴い供給体制が整備されれば、デメリットとされる建築コストは下がるでしょう。元々、工場加工で現場作業が効率化する工法なため工期短縮によるコスト削減メリットが浮き出てさらに普及を後押しすると予想されます。
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