国内の建設業界では脱炭素やSDGsといった世界的な動きに呼応するように、中・大規模建築物の木造化を進めています。地域活性化や環境インフラに大きく影響する業界のため課題解決に取り組む企業が増加しています。
特にゼネコンと言われる大手建設会社は木造化プロジェクトを組んで、競合他社の差別化しながら積極的に大型ビルを竣工。床や壁の一部をCLTを活用したり、純木造の高層建築物の可能性に挑戦しすでにスタートしているものもあります。
木造ハイブリッド免震建築です。鉄骨造をベースとしていますが、耐震性能を上げるためコアの鉄骨フレームにCLTを設置。木目が見えるCLTの壁を並べるように配置することで安全性と見た目の美しさを両立させました。
耐火集成材として西日本で初(※)となる2時間耐火柱「燃エンウッド柱」を採用。さらに、耐火性能を2時間まで拡張したCLT+鉄骨ハイブリッド構造も日本初の適用(※)となり、次世代木質構造建築に仕上がっています。2時間耐火に対応したことで、木質ハイブリッド構造として最上部より14層まで採用できるようになり、適用可能範囲の大幅な拡大を実現しました。
1階ロビーをはじめとした来客エリアを中心に、木造の魅力が伝わる木質あらわし仕上げを採用。内装材に木質材料を積極的に使うことにより、見学者が木造・木質空間を体験でき、木造木質技術の普及を目指しています。また、幹線道路側にも耐火集成材を使用し、木造化がよく分かる構造に。池の上に木造建築を建てるという試みも、木造建築のPR効果および認知度の向上が狙いです。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2020年10月 |
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延床面積 | 3334.35m2 |
構造 | 鉄骨造(CLT利用) |
使用したCLT | 202.3m3 |
防耐火構造 | 耐火建築物 |
高知県香南市庁舎の建物です。地上7階建てで災害が起きた場合の防災拠点としての役割も担います。耐震壁としてCLTを活用しており、CLT耐震パネルの四隅をL字金物で上下の梁に取り付けることで外力で壊れることを阻止します。
2020年2月末に完成した高知県香南市の新庁舎の内装には、県・市産の木材がふんだんに使用され、森林に恵まれた高知県の魅力をアピールできる施設に仕上がっています。
鉄骨としっかりと組まれたCLTパネルにも県産の木材が使用されており、筋交いの役目を担いながらも、木目の優しい表情を堪能できる空間を演出。夜須町の市有林から切り出した杉を使った腰壁は、節目のない美しさが魅力です。また、市の未来を話し合う市議会議場の机や台、壁面にも多くの県産・市産材が使用されています。
南海トラフ地震にも対応できる想定で、4種類の免震装置を設置。鉄骨は耐火被覆で覆われ、燃えにくく壊れにくい災害に強い建物を目指しています。自家発電装置によって停電時の電源を確保でき、災害時でも7日間活動できるとのこと。シャワールーム付きの仮眠室も設置し、災害対応が長期化した場合の職員の厚生面にも配慮されています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2020年2月 |
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延床面積 | 7811.27m2 |
構造 | 鉄骨造(CLT利用) |
使用したCLT | 81m3 |
防耐火構造 | 耐火建築物 |
鉄骨とCLTを組み合わせて建築された神戸市にある都市型中高層木造ビル。水平力のみを負担するCLT耐力壁にすることで耐火被覆をなくし木目が見える造りにしており、床にもCLTを活用し全体で30%程度の軽量化を実現しました。
兵庫県林業会館は、スタイリッシュな外観デザインが特徴的な建築物です。一般的なガラスの窓に、CLTのパネルを組み合わせており、市松模様のようなデザインを実現。外周部はガラスで覆われており、都会的なデザインを演出しています。
また、夜になるとビル内の明かりが外へと漏れ出し、より市松模様のデザインが際立つように設計されています。一方、内装は木材が多用されており、温かみがあふれるナチュラルなデザインに仕上げられました。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2019年1月 |
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延床面積 | 1567.1m2 |
構造 | 立面混構造(1階RC造2~4階S造CLT利用) |
使用したCLT | 225m3 |
防耐火構造 | 防火地域/耐火建築物 |
神奈川県横浜市にある地上11階建て・高さ44mのビルです。純木造耐火建築物としては、国内最高となる高さを実現しています(2022年5月20日・大林組発の表時点)。大林組では、「これからの知を育む場」をコンセプトに、自社の次世代型研修施設として活用するとしています。
大林組が建築したPort Plusは、合計で1,990m3の木材が使用されています。木材を多用することで、約1,652トンのCO2の固定を実現。また、材料の製作から解体までのライフサイクルにおいて、CO2排出量は鉄骨造よりも1,700トン削減されるとしています。
地上部の構造材にコンクリートを使用しないため、工事中の粉塵やホコリ、騒音などの抑制が可能で、周辺環境に配慮した施工を可能しました。建物で使用する部材は事前に工場で製作しており、これによって施工のスピードアップと工期の短縮化も実現。1フロアの施工期間を10日(鉄骨造)から7日へと短縮しつつ、高い施工品質を確保しています。
一方、木造建築の課題であるのが耐火性や耐震性です。Port Plusでは、3時間耐火を実現した構造材を使い、建物の耐火性能を高めています。耐震性は十字形の剛接合仕口ユニットなど大林組独自の技術を採用し、鉄骨造やRC造と同等の強度・剛性を確保しています。
Port Plusを建築した大林組では、高い剛性と耐性、靭性を有する剛接十字仕口ユニットを開発し、構造部に採用しています。純木造の高層建築物では、柱と梁の接合部の強度と剛性を確保することが求められています。それを実現するため、大林組では3層で構成されたユニットを開発。組み立ては工場で行い、部材集結精度を向上させることで品質のバラツキを抑制しています。
そして実大試験を実施した結果、繰り返しの変形に対して高い弾性を保てることが確認されたそうです。また、大きな変形があった時にも、木質仕口パネルが変形へ追随することで、架構耐力の低下が防がれることが確認されました。
Port Plusはインテリアも印象的です。One Port・Living Port・Cross Portの3つに分かれており、それぞれが異なるテイストでまとめられています。
One Portは豊富な植栽と大きな空間が設けられており、開放感にあふれているのが特徴。ゆったりくつろげるスペースも用意されています。
Living Portはテラスやラウンジ、カフェなどがあり、コミュニケーションが楽しめる空間になっています。Cross Portは街とのつながりを意識しており、外と中が緩やかにつながるデザインがポイント。直に木のぬくもりを感じることが可能です。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2022年3月 |
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延床面積 | 3502.87m2 |
構造 | 不明 |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
宮城県仙台市にある木造ビルです。地上7階建て・高さ約27mで、純木造建築のビルとしては日本初となります。特筆すべき点は、木造建築で広く使われている集成材や、CLTを使用していない点です。そのため、さまざまな技術が取り入れられており、全国各地の木材を活用できる木造ビルのモデルケースといえます。外観はシンプルで、ビルの正面からは木の柱や梁が見えるようにするなど、木の風合いを活かしたデザインになっています。
髙惣木工ビルは、主要構造部に製材の合わせ柱・梁を取り入れているのが特徴です。集成材は木造建築物の構造部分に広く使われている一方、工場数は地域差があります。製材は全国に工場が点在しており、調達しやすいのがメリット。髙惣木工ビルでは、調達しやすい製材を使用することで、木造ビルの技術・ノウハウの蓄積を目的にしています。
ビルの構造部分には、シェルターが開発したCOOL WOODを採用。国土交通大臣認定を取得しており、鉄骨造やRC造と同等の耐火性能を有しています。また、建築物の強度を確保するために、柱・梁は複数の製材を金物で接合しています。さらに接合金物工法を採用することで、建築物の耐震性も確保しています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2021年2月 |
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延床面積 | 1131.25m2 |
構造 | 木造 |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明(準防火地域) |
銀座中央通りに建設された12階建ての木造商業施設です。細いスレンダーな外観が特徴的で、12層の木造架構を実現しています。CLTや集成材の制振壁や防振壁も取り入れるなど、さまざまな技術が使用された事例です。
HULIC &New GINZA 8は、独特の雰囲気を放つデザインが特徴的です。特に目立つのはファザードで、木の葉を思わせるデザインに仕上げられています。ガラスのカーテンウォールの外部には、アセチル化木材を取り入れており、長が違うものを異なる角度で配置しています。これにより建物へ差し込む光の量に違いが生まれ、季節・時間帯ごとに変化する光の表情を楽しめるようにしています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2021年10月 |
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延床面積 | 2460.25m2 |
構造 | 木造+鉄骨造 |
使用したCLT | 50m3 |
防耐火構造 | 不明 |
福岡県にある事務所ビルです。地上4階建てのオフィスビルで、延床面積は1,481.06m2となっています。CLT工法が採用されており、大きな面で支える構造が特徴です。これにより、高い耐震性を確保しつつ、環境にも配慮した建築物が完成しました。
外観の格子状の木材が使われており、見る人の目を引くデザインです。一方、内装は明るい雰囲気に仕上げられています。床はもちろん、壁や天井など、随所に木材を使用しているのもポイント。木目がそのまま活かされており、リラックスできる空間が生まれています。
一般に木造建築は環境に優しいとされていますが、井上ビルはゼロエネルギービルとして稼働しています。このほか、福岡の県産材や国産材が多用されており、地球温暖化にも配慮している姿勢が伺えます。
一方、一般的な建物では当たり前となっている断熱材は使用していないとのことです。意外に感じた方は少なくないでしょう。CLTパネルを取り入れることで、断熱材を使わずとも高い断熱性を実現できる可能性があります。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2017年2月 |
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延床面積 | 400.16m2 |
構造 | 木造(軸組工法CLT利用) |
使用したCLT | 180.26m3 |
防耐火構造 | 準耐火構造 |
柱・壁などの構造部にすべて国産木材を使用した、東京都千代田区にある日本初の木造ハイブリッド高層分譲マンションです。12~14階の高層階にCLTと、耐火集成材「燃エンウッド」が使用されています。
内装には積極的に木肌を現して、住宅のインテリアとして視覚化。建物の共用部エントランスの壁や床・天井の一部にも無垢の杉材がふんだんに使用されています。国内の森林資源の循環やSDGsをコンセプトとしているのが、国産材が使用される理由です。建物に暮らすこと自体が環境への貢献になると実感できるようにデザインされています。
プラウド神田駿河台は、耐震壁などの表面を耐火被覆材で覆わず、そのまま現しとして使用しています。木材の耐火性能を高める場合、表面に防火処理を施すのが一般的です。しかし、プラウド神田駿河台では積極的に木の構造を住宅のインテリアとして利用し、木目や木の質感を目で見て楽しめるようにしています。
また、共有部のエントランスなどにも無垢材を使うことで、木のぬくもりを身近に感じられるようにしているのも特徴。暮らすこと自体が環境への貢献になるという高揚感を感じられるデザインに仕上げています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2021年3月下旬 |
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延床面積 | 2,529.45m2 |
構造 | 鉄筋コンクリート・木造ハイブリッド構造 地上14階 |
使用したCLT | 高層階(12~14階) |
防耐火構造 | 耐火建築物 |
札幌市にある国内初の高層ハイブリッド木造ホテルです。究極の地産地消を目指したこのホテルには、1,200m³以上の木材が使われており、その内の約8割が北海道の木材が使用されています。9階から塔屋階の上部4層が純木造で、CLTが使用されているのは8階の床材の一部です。
建物全体から木のぬくもりを感じられるほか、ロビーや客室のいたるところに観葉植物が置かれていて、リラックスできる雰囲気。まるで北海道の大自然に身を預けているような心地良い時間を過ごせるようになっています。
ザ ロイヤルパーク キャンバス札幌大通公園では、建物を木造化することによるメリットを活かせるようプランニングされています。特に注力したのが納期の短縮と建物の軽量化で、さまざまな工夫が取り入れられています。
例えば、木造階の床にはモルタルなどの湿式工法は使わず、乾式工法を使って遮音性能を確保。同時に工期の短縮も実現しています。また、木造階や屋上に配置する設備機器は必要最小限に留め、建物の軽量化を図っています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2021年 |
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延床面積 | 6,157m2 |
構造 | RC造、W造、8階床一部CLT造 |
使用したCLT | 225m3 |
防耐火構造 | 記載なし |
世界初の木質構造を有するオフィスビルの事例です。鉄筋コンクリート造の柱をCLTで囲むことにより、木造ビルのように見える外観に。鉄筋コンクリート造とCLTを組み合わせて強度を高めているので、木質構造でありながら地下1階・地上8階建てという高層階を実現しています。
型枠以外にも床と壁の2か所でCLTパネルが利用されています。耐火性が高いうえ優れた断熱効果も有しているなど、安全性と快適性の両立にも一役買っているでしょう。
日本では、木造建築物に対してさまざまな厳しい規制を設けています。そのため、純水な木造の中高層建築物を建てにくいのが実情です。タマディック名古屋ビルでは、コンクリートとCLTを組み合わせることで各種規制に対応しています。構造部はCLTパネルでロの字型の柱部分を作り出し、それを型枠としてコンクリートを打設。これにより、通常時はRC部分が建物を支え、地震などの揺れにはCLT部分とRC部分が抵抗するようになっています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2021年11月 |
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延床面積 | 4243.07m2 |
構造 | 不明 |
使用したCLT | 530m3 |
防耐火構造 | 耐火構造(2時間) |
名古屋市中区にある在来木造の3階建ての事務所です。アットホームな雰囲気を大切にしており、外観にも自然素材をふんだんに使用しているのが分かるでしょう。
「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)建築」を採用しているのが特徴で、断熱性を高めるのを目的に壁の一部にCLTパネルを利用しています。そのほかにもLowーE複層ガラスや樹脂サッシなどで断熱性を高めており、少ないエネルギーで快適な空間をつくれるよう工夫を凝らしています。
ザイソウ正木ビルは、とてもシンプルな考えに基づいてZEBを実現しています。まずは断熱をしっかりと施し、寒冷地レベルの性能を確保するために、北海道の木造住宅を参考に断熱仕様を検討。次にエアコンや照明などを高効率な製品へ置き換え、断熱で補えない部分をカバーできるよう設計しています。そして不足している創エネの部分については、太陽光発電を導入して補っています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2019年3月 |
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延床面積 | 493.39m2 |
構造 | 木造 |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
渋谷区にあるオフィスビルです。木造と鉄骨造のハイブリッド構造を取り入れ、木材は全て国産材を採用しています。視認性が高いオフィスの前面を木造化しており、環境問題への取り組みが外から見て分かるようザインしているのが特徴。木材を利用者が直接触れられる場所に取り入れることで、木を実感できる空間を創り出しています。
また、CLT耐力壁と乾式遮音壁を採用し、高い遮音性も実現。音が伝わりにくい構造にすることで、利用者の利便性を向上させています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2022年8月 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | 鉄骨造(一部木造) |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
自然素材をふんだんに使った外壁にアイアンが映え、メリハリのある外観に仕上げた福祉ビルの事例です。構造躯体をはじめ、あらゆる部分にCLTパネルを採用しており、入居者の安全性と快適性を確保しています。
また、CLTパネルは木材の豊かな風合いを感じられるため、リラックス効果や室内を明るく見せる効果などが期待できるでしょう。こちらのビルでは壁や床にCLTパネルを使っており、ナチュラルで温かみのある室内空間を演出できるよう設計されています。
ぷろぼの福祉ビルでは、CLTを多用することで工事のスピードアップと工期の短縮化を実現しています。1階の基礎部分やRC構造の部分は苦労したものの、3階以上のCLT部分は比較的スムーズだったとしています。あらかじめ鋼台や金物を取り付けていたため、現場での組立作業が早く済んだとのことです。結果的にlワンフロア7〜10日での組み上げを実現しています。このスピード感はCLTならではのメリットといえるでしょう。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2016年7月 |
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延床面積 | 971m2 |
構造 | 不明 |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
ロンドンにある9階建てのCLTビルです。高層建築物ですがオーストリアから輸入されたCLTの構造体が使用され、全てをRC造にすると72週間かかるのをCLTを活用することでを49週間に短縮できた事例です。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2009年 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | RC造(CLT利用) |
使用したCLT | 不明 |
防耐火構造 | 不明 |
ノルウェーにある世界一高い※18階建て木造ビルです。地産地消の願いから木材を近隣の森から持ち込み地元の工場で構造材に加工。ホテル部とアパートメント部に分かれ、エレベーターや階段のシャフト、バルコニーにCLTを使用しています。
※2019年3月現在
【基本情報】
竣工(予定日) | 2019年3月 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | 不明(CLT利用) |
使用したCLT | 約1400m3 |
防耐火構造 | 不明 |
ウィーンにある都市型ハイブリッド木造7階建てビルです。防耐火の事情から1階はRC造になっており、2階から7階までは被覆されたCLTを採用しています。木造部分を強調していないため外観からはわからない構造になっています。
【基本情報】
竣工(予定日) | 2013年 |
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延床面積 | 不明 |
構造 | 不明(CLT利用) |
使用したCLT | 2,400m3 |
防耐火構造 | 不明 |
上記の他にも、さまざまな木造ビルの計画や構想があります。各ビルの構想や特徴をご紹介します。
ALTA LIGNA TOWERは、竹中工務店が設計・制作した高層木造建築のモデルです。20階建てのビルで、7〜20階部分に同社が開発した燃エンウッドを使用しています。燃エンウッドは複数の層で構成されており、高い耐火性能を実現していることから、高層建築物への適用を可能しています。
ALTA LIGNA TOWERはオフィスのほか、商業施設・会議施設などでの利用を想定しています。実現した場合、サステナブル建築の実現に大きく寄与する可能性があります。
2022年8月、東京海上日動火災保険は東京海上日動ビル本館を建て替え、木造化する計画を発表しました。構造部の柱や床に国産の木材を多用し、世界最大規模となる地上20階建て・高さ100mの木造ビルを目指しています。
新しい東京海上日動ビル本館は、ビルを支える柱はもちろん、床などの構造部分にCLTを用いることを予定しています。ビルの木の柱は、力強い大木をイメージしてデザインされており、見る人に安心感を与えられるよう設計するとのことです。
また、エクステリアには時間と季節によって表情を変えるガラスのファザードを取り入れるなど、安らぎを意識したデザインに仕上げられています。印象的なデザインのため、丸の内の新たなランドマークになることが期待されます。
東京海上日動ビル本館は、訪れる人々に静寂と安らぎを与える屋上庭園の設置も予定されています。屋上庭園は、エントランスの中央部分に中庭を設け、樹木を植えることデザインになっています。また、ビルの周辺に植えられた街路樹などと合わせ、季節の変化や自然の暖かさを感じられる空間づくりを目指しています。
W350計画は、住友林業が創業350年となる2041年の完成を目標にしている木造高層ビルです。目指している高さは350mで、仮に実現すれば、世界でも有数の高層木造建築物になると予想されます。
W350計画は、高層建築物の木質化・木造化による環境木化都市の実現を目指しており、建築工法や環境配慮技術の開発・実証などが行われる予定です。なお、企画構想や木質化は住友林業が、建築・構造設計は日建設計が担当しています。
LOOP50は、大林組が掲げている木造建築のプロジェクトです。中山間地域に新たな街を作ることを提案しており、持続可能性と魅力ある暮らしの両立を目指しています。
LOOP50では、木の成長に合わせて街を拡大する仕組みが検討されています。まず地域の森で50年かけて木を成長させます。次に成長した木を伐採し、伐採した木材の量に応じて建物を建築します。なお、建物は毎年1区画ずつ増築を検討しており、50年間使い続けることを想定しています。
50年が経過して役目を終えた木材は、地域のエネルギー源としての利用が検討されています。50年ごとに1区画ずつ増築する一方、1区画ずつ解体することで木材を確保。街の中にあるエネルギー棟へと運び、他の建物へエネルギーとして分配する構想が描かれています。これにより、森林資源のみで循環する街が完成します。
東京都港区に本社を構える株式会社大林組およびオーストラリアのBuilt Pty Ltdの共同企業体がオーストラリアの大手不動産会社であるDexusから、アトラシアン・セントラル新築工事を受注。地上39階建て・高さ182mの建築物です。木造ハイブリッド構造としては世界1位の高さです。
こちらのビルの設計の仕様は、LEEDやWELLなどのグリーンビルディング認証で高いレベルの認証を取得できるものになっています。なお、通常のビル建築工事などと比較して、排出されるCO2量を半分以下に抑えることを目標としてかかげています。さらに、完成後、すべてを再生可能エネルギーでビルを稼働させていくことも、もうひとつの目標としています。
地上の構造部材をすべて木材にした「高層純木造耐火建築」を建設するなど、建物の木造・木質化に力を入れている大林組の考え方に通じるものがあるといえます。木造・木質化を推進することで、循環型資源である木材利用がさらに広まっていけば、持続可能な社会の実現に寄与できるという理論がベースになっているわけです。
三菱地所株式会社が福岡県福岡市中央区天神一丁目で計画が進行している「天神1-7計画」。この計画が、「天神ビッグバンボーナス」の認定を受けました。 福岡市が推進しているプロジェクトである「天神ビッグバン」は、天神地区における新たな空間と新たな雇用を創出することを目的としています。「感染症対応シティ」や「Fukuoka Art Next」などの取り組みも併せて積極的に進めていくことで、天神地区の国際競争力向上につなげるねらいがあります。
情報受発信基地であった「イムズ」跡地の複合ビル開発プロジェクトとして、天神からスタートし、福岡、九州、そしてさらには世界をリードできるようなまちづくりの推進を継続していきます。
ビルそのものだけに目を向けるのではなく、都市と自然のハーモニーを大切に考えた都市空間の形成にも重点をおきます。また、渡辺通りに面する敷地南西側の建物低層部がランドマークとしての役割も果たせるように、V字柱や吹き抜け空間をつくるなどの工夫をします。
CLTを使用することで、地球温暖化防止につとめたり、建物内の電力をすべて再生可能エネルギー由来にしたりするなどの配慮をおこないます。
敷地南側に、渡辺通りとふれあい広場をむすぶ地上広場などを整備します。また、地上広場と地下広場の動線などを整備することで、歩行者ネットワークの強化をはかります。
「感染症対応シティ」を実現するため、オフィスへの自然換気・広場等へのWi-Fi提供などの実施によりポスト・コロナに対応可能なまちづくりを推進します。また、屋外パブリックアートの設置による彩あふれるまちづくりも目指します。
ライフデザイン・カバヤ株式会社では、主要構造部にCLTを採用する中高層建築計画が進んでいます。6階建てCLTビルの構造プロトモデルの設計実証が完了して建築が可能になったことが、この計画を支えています。プロとモデルの特徴はシンプルさと汎用性の高さです。CLT建築の経験無い工務店や設計事務所への展開を考えています。
三菱地所設計が、東京都千代田区に、オフィスや駐車場などの用途をもつ施設の建設を計画しています。「木の本店ビル」を目指したプロジェクトで、Renzo Piano Building Workshopと協働してプロジェクトを進めています。構造部材に国産木材を多用することに加え、すぐれた災害対応力や環境性能を有するサステナブルな社会に貢献する設計を採用することも、大きな注目ポイントだといえます。
CLTでは同程度の大きさのプレキャストコンクリートパネルよりも1/4程度の重量となり、建物の軽量化を図ることが可能です。さらに国土技術政策総合研究所が行った国産杉CLTパネル構造の実験では、十分な耐震性を誇るという報告があります。
CLTは「環境に配慮した建材」「優れた耐久性」「建造物の軽量化」「工期短縮」などのメリットがあります。CLTは木材からつくられているので、鉄筋コンクリートの建築よりもCO2の排出量が抑えられ、強度も確立されているといった特徴も。そのため住宅だけでなく高層ビルなど多彩な建造物に対応可能です。
また材料自体も非常に軽く、大型建築で欠かせない地盤補強の手間もかからないといった利点も期待できます。さらに工場で加工し現場搬入されるため、作業が容易かつスピーディになるメリットも。
CLTはメリットばかりではなく、デメリットもあります。最大のデメリットはコスト面です。国産木材を用いたCLTは1m3当たり15万円ほどの価格となっており、ヨーロッパ産よりも2倍以上のコストがかかってきます。そのためコストが下がらなければ、国産材のCLTの普及は難しいと言えるでしょう。
また耐火対策が必要という点や、現場での加工が難しいという点もデメリットに挙げられます。CLTが鉛直力を支持しており、現場で穴をあける・カットするなどの作業が自由にできません。そのため設計の段階で、配管などの位置を事前に決めておく必要があります。
参照元:【PDF】内閣官房
CLT木材の活用方法はさまざまありますが、国内で対応できる業者はまだ限られています。各社で対応範囲も異なりますので、設計から外注したい場合は、ワンストップで対応できる応業者を、木材のみほしい場合は製材を専門とする業者に依頼するなど相見積もりをとった上で自社に合った依頼先を見つけることが重要です。
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