現在、SDGsと並びESGやESG投資に世界の注目が集まっています。そこで中・大規模建築物の木造化やCLT木材の活用が、ESG評価の向上にどのくらい影響するのかについて使用事例も見ながら解説します。
脱炭素はESGにとって重要なテーマの一つです。樹木は成長する過程で大気中の二酸化炭素を取り込み、伐採して使用する木材も二酸化炭素を貯める機能を持っているため、森林資源の活用や循環型社会の実現に向け建物の木造化が大きく寄与します。
建築物の中でもビルなど中・大規模の建物が木造化・木質化することは木材の使用量が多いため脱炭素への貢献度はより高くなります。ESG投資の観点からもこうした木造建築への企業の姿勢はプラス評価につながります。
ESGとは、環境(Environment)のE、社会(Social)のS、ガバナンス(Governance)のGを合わせて作られた言葉です。今後、企業が長期的に成長するためにはこの3つの観点が重要という考え方が世界的に広がっています。
近年は気候温暖化や人種差別など社会課題が顕在化しており、投資家からもこれらの観点から企業を分析して投資するESG投資が注目されています。企業の経営基盤の強化においてもESGは無視できない言葉になっているのです。
ESG投資は、企業の財務面だけでなく、環境やガバナンスなども評価に含める投資手法をいいます。投資家は、その企業の環境保護への取り組みや、ガバナンスなどをチェックしたうえで投資判断を行います。
ESG投資は、木造建築の市場拡大に合わせて関心が高まっており、海外では徐々に投資家の資金が集まりつつあります。日本でもCLTによる木造建築に注目が集まっていますが、今後はESGの観点から投資を行う投資家も増えると考えられます。企業側にとっても、全社規模でのESGの推進は必須となってくるでしょう。
CLTなどを用いた木造建築は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現にも寄与します。ZEBは、省エネと創エネをセットにし、エネルギー収支ゼロを目指した建築物のことです。ZEBの実現には環境への配慮が求められますが、建築物の木造化・木質化は環境保護と快適な室内環境の実現を可能します。部分的にCLTを用いるだけでも、ZEBを大きく推進してくれるでしょう。
CLTは、木の板を繊維方向が直交するように接着した木材パネルのこと。強度が安定し断熱性にも優れるため今後利用拡大が期待されますが、CLTではカラマツやトドマツなどこれまで建材としてあまり利用されなかった木材も使われます。
日本の人工林は樹齢50年以上のものが50%を超えると言われますが、CLT木材を活用した中・大規模木造建築が進むとこれらの木材の利用も拡大し、林業の振興や森林資源循環に貢献することができます。
大手ゼネコンのESGに関連するCLT木材使用実例の一部を以下に紹介します。
国内初の高層ハイブリットホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」は構造材の80%が北海道産の木材でCLT床材を始め、さまざまな箇所にトドマツを採用しています。
次世代型研修施設として日本初の高層純木造耐火建築物を建設。同社の耐火木造技術「オメガウッド(耐火)」を採用し、宿泊室にCLT遮音床が活用されています。
建設会社にとってESG貢献はサステナビリティの実現に向けた活動として評価されるため、木造ハイブリッド建築から始まり、今後は純木造の中・大規模建築物において大手ゼネコンの間で開発競争が予想されます。国もCLTの普及に力を入れているため、こうしたトレンドはしばらく続くでしょう。
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