この記事では、CLT木材を用いた海外の建築事例と日本国内におけるCLT木材の可能性を解説します。
CLT木材は、1995年頃にオーストリアなどで開発された木質系材料です。端材の活用方法を模索する中で誕生したと考えられています。オーストリアの大手メーカー・KLH社がCLT木材の量産を始めたのは2000年頃からです。2005年頃からCLT木材の大規模な生産工場が増え始めます。
現在では、オーストリアのほかドイツ、スイス、イギリス、イタリアなど、ヨーロッパ各国へCLT木材は普及しています。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどへ普及している点も見逃せません。これらの国々では、戸建て住宅のほか、集合住宅や福祉施設、商業施設などの建築に用いられています。いずれにせよ、CLT木材はヨーロッパで開発された木質系材料です。
2009年にロンドンで完成した「Murray Grove」は、CLT木材を用いた9階建ての高層住宅です。炭素ストックをコンセプトに掲げている点がポイントといえるでしょう。特徴は、構造パネルを用いたハニカム構造を採用していることです。完成まで49週間しかかかっていない点も見逃せません。RCで同様の高層住宅を建築した場合、72週間程度かかると考えられています。
CLT木材を用いれば、短期間で高層住宅を建築できることを証明しました。「Murray Grove」は、CLT木材がRCの代替になる可能性を示し、イギリスにCLT木材の普及を促したと評価されています。
2012年にウィーン郊外でオープンした商業施設「G3 Shopping Resort Gerasdorf」もCLT木材を用いた建築物です。特徴は、オーストリアのCLTメーカーがCLT木材のプロモーションとして資材提供を行っていることです。8,000立法メートルのCLT木材を使用しています。建築物の特徴は、軒裏や天井の一部などがCLT木材の現しになっていることです。
建物全体を通して、木のぬくもりを感じられるデザインになっています。現在では、地元民に愛される人気商業施設になっている点も見逃せません。CLT木材のさらなる可能性を示した建築物といえるでしょう。
CLT木材を用いた建築物の例を見てわかる通り、海外では戸建住宅はもちろん、中高層などの建物にもCLT木材が積極的に活用されています。日本国内でも、CLT木材を用いた中高層などの建物が増加する可能性があります。その根拠といえるのが、環境面の整備が進められていることです。2016年に行われた建築基準法の基づく告示で、告示に基づく構造計算などを行えば建築確認(個別認定は不要)によりCLT木材を用いた建築物の建築が可能になっています。
また、CLT木材を用いた建物への支援事業も行われています。つまり、CLT木材が普及する土壌は、日本国内でも整いつつあるのです。すでに、CLT木材を用いた集合住宅、事務所、ホテル、商業施設などは登場しています。今後、海外のように普及する可能性は高いでしょう。
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