木材という持続可能な素材を利用することで、環境負荷を低減しながら都市の建築物を進化させる取り組みが進んでいます。特にオーストラリアやヨーロッパを中心に、木造や木材と他の素材を組み合わせた「ハイブリッド構造」のビルが数々建設され、革新的な技術と環境保全の両立が図られています。
オーストラリアのシドニーで進行中の「アトラシアン・セントラル」は、木材と鉄骨を組み合わせた「木造ハイブリッド構造」として世界最高の182メートルを誇る建物です。このビルは、オーストラリアの「Built Pty Ltd」と日本の株式会社大林組による共同企業体が、現地の不動産会社Dexusから受注しました。
「アトラシアン・セントラル」の7階以上は木材を活用したハイブリッド構造で、木材のもつ温かみや自然素材の風合いが都市部の高層ビルに取り入れられています。このような木造高層ビルは、環境負荷の低減を目指すだけでなく、人々に快適で持続可能な空間を提供することを目指しています。
また、住友林業株式会社とNTT都市開発株式会社も、オーストラリアのメルボルン市近郊で「RC・木造混構造」のオフィスビルを建設しています。このビルは地上15階、地下2階の規模す。木材と鉄筋コンクリートを組み合わせたこの建物は、環境に配慮した「ネットゼロカーボンビル」を目指しており、使用時に排出されるCO2を実質ゼロにすることを目標にしています。
このプロジェクトを通じて得られる知見は、将来的に日本国内の木造建築技術の発展にも活かされる予定です。海外での先進的な木造建築の取り組みを通じて、国内の建設業界でも持続可能な技術が導入されることが期待されています。
木造高層ビルの中でも特に注目される技術が、CLT(Cross Laminated Timber)工法です。CLTは1990年代にオーストリアで開発され、その後北米、オーストラリア、イギリス、ドイツなどの国々で広がりを見せています。この技術は、複数の木材板を交差させて接着することで、強度と耐久性を兼ね備えたパネルを作り、高層建築にも適用できるという特徴を持っています。
例えば、カナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学では、2019年に18階建て高さ53メートルの「Brock Commons Tallwood House」が建設されました。CLTパネルを使用したこの学生寮は、木材がもたらす暖かい雰囲気と高い環境性能が評価されています。
また、ロンドンの「Daslton Lane」では、2017年に9階建ての木造集合住宅が建設されました。この建物では、従来の鉄筋コンクリート構造に比べて温室効果ガスの排出を大幅に削減することができました。さらに、スウェーデンの首都ストックホルムでは、世界最大規模の木造都市「Stockholm Wood City」の建設が計画されており、2025年から約7000のオフィススペースと2000の住宅が整備される予定です。
木造高層ビルは、環境に優しい持続可能な建築を推進するための重要な一歩です。従来の鉄筋コンクリートに比べてCO2の排出が少ないだけでなく、再生可能な資源である木材を活用することで、自然と共生する新しい都市開発の方向性を示しています。
海外の木造建築プロジェクトは、日本にとっても多くの学びを提供してくれます。今後、これらの知見をもとに、国内の木造高層ビル建築が進展し、より持続可能で快適な都市が実現されることが期待されます。
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