CLT木材使用推進メディア ~CLTs~ » CLT木材の基礎知識 » CLTが雨で受ける影響

CLTが雨で受ける影響

耐火性・耐震性に優れた建物づくりに役立つ「CLT」。板材を何層も貼り合わしてつくられています。このページでは、そんなCLTが雨でどのような影響を受けるのかを、実際に行われた検証などを含めて調査したので是非チェックしてください。

散水試験による検証

散水によって施工途中に起こり得る雨の状態を再現し、条件の異なるCLTに起こる影響を検証した事例です。吸水面は材面だけとしており、木口面は防水気密テープで覆っています。試験体には幅100㎜・長さ100㎜・厚さ90㎜のスギCLTを24体用意し、散水時間・散水時期・表面塗装を異なる条件で検証。散水ホースを活用して、CLTの片面に散水を実施しました。

参照元:【PDF】鳥取県林業試験場

撥水剤による吸水とカビの抑制

散水試験によって、撥水材は吸水とカビの抑制に効果があるという結果が得られました。雨掛かりの時間が長ければ長いほど吸水量は大きくなり、冬期よりも夏期の方が最大3倍ほど吸水量は多くなっています。さらに撥水材を塗布しておくことで、吸水量は最大1/4まで抑えられるという結果に。夏期に48時間以上散水した条件では撥水材を塗っていない試験体のすべてにカビが発生しました。つまり吸水・カビの両面からみても、撥水材を塗った方が良いと言えるでしょう。

参照元:【PDF】鳥取県林業試験場

散水後の乾き具合

次に濡れたCLTがしっかりと乾いたかどうかをチェックする方法について見ていきます。そこで含有率計・ITCで乾き具合がチェックできるかどうかを検討。散水時間・表面処理に関係なく、含水率の減少が落ち着くまで、散水時間72時間であれば1週間程度、散水時間48時間であれば5日程度、散水時間24時間であれば3日程度という結果になりました。つまり含水率計で濡れた状態のCLTを一定期間測定することで、その数値の落ち着き具合で乾いたかどうかを判断できます。またITCを活用して、濡れた材面の温度差を確認することで乾いたかどうかを判断可能です。

濡れた場合の反りはそこまで大きくはない

散水したCLTの反り量を測定したところ、最も大きかったのは凹の反りで-1.86mmという結果になりました。しかし散⽔をしていない状態での試験体でも-0.76mmの反りを確認。散水なしの試験体で発生した反りは、周囲の温湿度の影響によるものだと想定されています。「散水した試験体の最⼤反り量」-「散水無しの試験体の最⼤反り量」=「散水によって発⽣する最⼤反り量」として計算すると、反り量は1mm程度であり、施工に影響を与えるものではないと言えるでしょう。

参照元:【PDF】鳥取県林業試験場

温湿度の差で反りは増加する

試験機を使用して実大寸法のCLTの表裏面を長期間異なる温湿度環境下に曝露し、反りの状況を確認しました。その結果、材⻑2730mmの試験体で11mmの反りが発⽣していることが判明。つまりCLTを床板や外壁などに使用するのであれば、塗装・接合など反りを抑制する対応が必要です。

水分がどれほど浸透するかの試験

雨掛かりを想定して行われた試験で、試験体としてスギCLT(Mx60A-3-3)、90mm角⽴⽅体を使用。浸透時間を72時間・48時間・24時間とし、浸透面を材面・材面(節あり)・材面(目地あり)・材面(フィンガージョイントあり)・内層木口・内層木口(木地あり)・外層木口・外層木口(木地あり)としています。また表面塗装は処理なし・木材浸透型保護着⾊塗料・木材割れ防止剤で実施。

参照元:【PDF】鳥取県林業試験場

浸透時の側面の様子

試験後の側面の様子を観察してみると、木地や貫通した節があるCLTでは目地・貫通した節から水が漏れることが判明。また材面からの浸透では側面の水の痕は比較的少ないにも関わらず、木口を含む横断面からの浸透では側面に水の痕が多く残っていました。つまり木口の端から浸透した水は、材面にしみ出すと言えるのです。

内部の様子

木材を切断して内部の様子を確認したところ、材面から水分ははみ出しておらず、木口からはかなり浸透していました。しかし木口であっても木材割れ防止剤を塗布しておくことで、かなりの割合で浸透抑制の効果が期待できます。

また継手には深く水分が入り込まず、木地には水が入り込むことが判明。木口の端部から浸透した水は、接着層側でも材面に染み出すことが報告されています。

浸透の深さと含水率

浸透深さを求める場合、目地・節・継手がない試験体の材面または木口中央の切断面における⽔痕の面積率から浸透深さを平均値として算出。また浸透試験による含⽔率の増加ポイントを全乾法で算出しました。その結果、浸透時間が長いほど深く浸透し、含水率の増加も大きいことが判明。さらに材面よりも木口で深く浸透し、木口の面積が大きいほど含水率の増加も大きくなっています。木材割れ塗装剤よりも木材浸透型保護塗装剤、素地の方が浸透は深く、含水率の増加も大きいという結果になりました。

乾き⽅

浸透面の違いによって塗料塗布の有無は、そのあとの乾燥状況にほとんど影響がないという報告があります。ただし濡れたCLTを放置してしまうと、乾いたときに木地が広がることが判明。つまり幅はぎ接着したCLTであれば、割れなどのリスクが高まる恐れもあるので注意が必要です。

日本の年間降水量

CLTが水に対しての傾向が分かれば、次に日本の年間の降水量は実際にどのようになっているのでしょうか?

2022年の日本の降水量の基準値からの偏差は―71.5㎜で、日本において年間降水量には長期的な大きな変化傾向は特にみられません。ただ2010年代移行には多雨期が見られ、1970年代から2000年代までは年単位の変動も比較的大きくなっている傾向があります。

参照元:気象庁

雨による洪水・浸水被害の例

日本の各地で雨による洪水・浸水の被害が報告されており、毎年のように多大な被害に遭っている現状があります。

洪水災害の例

平成24年7月に遭った「九州北部豪雨」被害があります。これは7月11日~14日にかけて九州北部地方を中心に記録的な大雨になった事例です。この大雨によって河川の氾濫・土石流・がけ崩れなどがおこり、熊本県・大分県・福岡県にて支社30名、行方不明者2名、さらに九州北部エリアを中心に1万棟を超える住家の尊家や浸水などの被害になっています。河川においても矢部川の堤防が決壊し、白川・合志川・花月川などで護岸崩壊などが発生したため、各地で浸水の被害などが多数起こりました。

参照元:気象庁

浸水害の例

平成20年8月29日に愛知県一宮市で起こった事例では、南側から湿った空気が流れ込んだことで、愛知県を中心に大雨が発生。一宮市においては時間雨量が100㎜を超える記録的な雨となり、道路の冠水などが起こっています。

参照元:気象庁

まとめ

CLTは木材でつくられているため雨に濡れてしまえば吸水してしまい、カビが発生する要因になる恐れもあります。そのため吸水対策として撥水材塗布などの対策が重要です。また反りへの対策も欠かすことができません。CLTを活用するメリットは非常に大きいため、しっかりと雨対策を講じたうえで建材として利用を検討してください。

日本を代表する樹種ヒノキの
特徴と
CLT木材への活用などを紹介

目的と用途に合わせて選ぶ
おすすめ
CLT木材製造メーカーをチェック

高品質・低コストを叶える
CLT木材製造・販売メーカー2選

木材のみ購入したいなら

サイプレス・スナダヤ
サイプレス・スナダヤの特徴
  • CLT⽊材の⾃社⼀貫⽣産による中間コスト削減で、低コストでの供給を実現
  • 品質の⾼いヒノキ材の販路を持っており、ヒノキCLT⽊材の価格‧品質に⾃信あり

設計から依頼したいなら

銘建工業
銘建工業の特徴
  • 3×12mの最大サイズCLT木材の製造にも対応可能
  • 設計・製造・施工までワンストップで対応できる有名建材メーカー
※日本CLT協会が発表する「CLT製造企業一覧表」に掲載される国内のJAS規格に適合するCLT木材メーカー8社の中から、年間製造能力の上位2社(2022年1月11日調査時点)を選出しました。