2010年に施行された木材利用促進法。2021年に大きな改正があり、法律の題名や目的が見直されています。
このページでは、木材利用促進法の基本方針や制定目的について解説しながら、木材利用に関する補助金情報をまとめました。
※参照元:林野庁「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」 (https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/index.html)
木材利用促進法とは、木材利用に関する法律の通称です。制定時の正式名称は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」でした。
2021年に改正され、題名は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変更されました。
改正後の通称は「都市(まち)の木造化推進法」と呼ばれており、建築全般の木造率の向上を目標としています。
木材利用促進法の制定当初、木造化を推奨する建築物は公共建築物に限られていましたが、今回の改正で民間施設を含む「建築物一般」へ拡大しています。
木材利用促進法が制定された当初の目的は、日本の天然資源を活用して地域経済の活性化を図ることでした。現在では、地球温暖化防止のための「カーボンニュートラル実現」の目標達成に向けた取り組みとしても行われています。
日本は、2030年度までに温室効果ガスの46%削減(2013年度比)、2050年カーボンニュートラル実現という目標を掲げ、国連気候変動枠組条約事務局へ提出しています。
改正時に題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変更となったのも、このカーボンニュートラル実現に向けた取り組みのためです。
※参照元:環境省「日本のNDC(国が決定する貢献)」 (https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/ndc.html)
木材利用促進法では、木材の安定供給や需要確保のために、林業や製材業の持続可能性を求めています。国内で人工林の整備を進めており、将来的には海外の輸入材に頼らず国内で木材を自給できるようにするのが目的です。自給率向上への取り組みは、補助事業によって支援されています。
ここからは、政府や自治体が実施している木材利用に関する補助金について、内容や補助金の対象を詳しく解説します。
意欲と能力のある林業経営体を育て、木材の生産事業を持続的に行うための取り組みに対する補助金で、林野庁(農林水産省)が実施しています。
搬出間伐や主伐と再造林を一貫して行う事業体に対し、路網の整備や機能強化、高性能林業機械の導入、コンテナ苗生産基盤施設、木材加工流通施設や木造公共建築物の整備など、川上から川下までの取り組みが総合的に支援されます。
具体的な補助対象として、店舗など施設の内外装を木質化することで利便性や経済面への影響の実証などを行い、木材の効果を見える化する取り組みが挙げられます。
また、木質系材料CLTを用いた建築物、CLTを製造する企業との連携を構築するための設計・施工プロジェクトや倉庫などの簡易構造物の木造化・木質化を促進するための標準モデルを提案する取り組みなどにかかった経費の一部が補助されます。
※参照元:林野庁「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金の概要(PDF)」 (https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/R4sokushintaisaku_gaiyou.pdf)
国土交通省が実施している補助金事業です。木造技術の発展や普及啓発、優良木造事業の普及を目的としたプロジェクトに対し、審査の上で補助金が支給されます。プロジェクトの対象となるには複数の要件を満たす必要がありますが、サステナブル建築物等先導事業や優良木造事業として評価されれば、プロジェクトの実施費用の一部が補助されます。
採択されたプロジェクトは毎年発表があり、シンポジウムが開催されています。シンポジウムは会場参加のほかライブ配信やオンデマンド配信も行われており、事例発表会の様子を確認できるようになっています。
※参照元:令和5年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)及び優良木造建築物等整備推進事業評価事務局 (http://www.sendo-shien.jp/05/)
民間非住宅建築物における内外装の木質化がもたらす生産性や経済性効果を調査することを目的とし、対象となる効果実証を行える事業に対して補助金が支給される制度です。
補助の対象となるのは、木質化によって施設利用者の作業性・業務効率が向上するか、施設来訪者が増加するか、滞在時間は延びるか、客単価など収益が上がるか、就労者不足解消につながるか、子どもの集中力が高まるかなど、生産性や経済性における効果実証です。
ただ、この補助事業は2023年7月28日で募集が締め切られており、以降募集はされていません。
※参照元:公益社団法人「日本住宅・木材技術センター」 (https://www.howtec.or.jp/publics/index/316/)
政府だけでなく、都道府県で木材利用促進の補助事業を実施しているところもあります。
奈良県が実施している「公共建築物における“奈良の木”利用推進方針」に基づいた補助事業です。
奈良県産の木材を使用して学校や老人ホーム、保育所、病院、体育館、図書館などの公共建築物を整備して木材産業の再生を図る事業に対し、予算の範囲内で補助金が交付されます。補助率は、木造公共施設で15%(CLTを活用するなどモデル性が高い事業の場合は1/2)、内装を木質化した建築物に対しては3.75%となっています。
※参照元:奈良県「公共施設における県産材利用に係る支援」 (https://www.pref.nara.jp/30973.htm)
奈良の木材の利用拡大を図るため、奈良の木を使用した住宅(新築、増築、改築又はリフォーム)に対して補助金が助成される事業です。
奈良の木を構造材に5立方メートル使用した住宅工事を行う場合、認証材は15万円、県産材には10万円が補助されます。
奈良の木を内装材に20平方メートル以上使用した場合の補助金額は、認証材で10万円、県産材は5万円です。奈良の木を使用するのであれば、個人でも分譲住宅の新築を行う事業者でもどちらも対象となります。ただし、賃貸住宅やモデルハウスは対象外となるため注意が必要です。
※参照元:奈良県「奈良の木を使用した住宅助成事業」 (https://www.pref.nara.jp/27797.htm)
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