木は燃えやすいイメージがありますが、建築物の耐火性とは火に対する強度であって燃えやすさだけでは判断できません。そこで木造やその他鉄骨、RC造などと比較しながらCLTを使った木造建築の耐火性について解説します。
CLTは一般的な無垢材とは違って、木質系厚板面材で強固なことが特徴ですが耐火性についてはどうでしょうか。実はこうした木材厚板は火災になっても表面に炭化層をつくり毎分1mmの速度で燃え進むことがわかっています。
厚さ90㎜のCLT壁が1時間以上経っても燃え尽きることがないことが実験で確認できており、設計方法によって一定期間建物の倒壊させないことが可能です。そのため火災発生時に避難するまでの時間を稼ぐことができます。
木は燃える素材なので耐火性が低いイメージがあります。確かに小さな薄っぺらい木片にライターで火をつければたちまち燃え尽きてしまうでしょう。しかし大きな丸太にライターで火を押し当ててもすぐに燃え広がることはありません。
また耐火性とは熱に対する強さも判断基準になります。例えば鋼材は350度くらいになると弾性限界荷重が約半分になるとされますが、木材は200度~300度で強度が2割に落ちるものの熱伝導率は鋼材の1/1000です。熱への強さを考えると木造建築の耐火性は思ったほど低くはないのです。
耐火性に優れるものとして鉄筋コンクリート(RC)造があります。そのものが燃えることはありませんし、外壁温度が火災時の1,000度になっても強度は下がらないため木造より耐火性は高いということになります。
では鉄骨(S造)はどうかというと550度で変形が始まり900度に達すると崩壊してしまうと言われます。火災になると木造は発火してしまいますが、炭化するだけで柱などが焼け残ることがあります。その点では木造の方が耐火性は高いと言えます。
CLT壁において、1時間および2時間の耐火構造に関する国土交通大臣の認定を取得したケースもあります。準大手ゼネコンの1社である熊谷組が開発したもので、2019年に発表されました。
熊谷組では、今後ニーズが高まると予想されている木造建築において、中大規模建築では壁や主要構造部にCLT壁が利用されると考えていました。しかし、CLT壁を木造の共同住宅などに用いる場合、建築物の階数に応じて1〜2時間の耐火構造でなくてはいけません。
このような実情を踏まえ、熊谷組では独自仕様のCLT壁の開発に着手。そして1時間および2時間の耐火構造の大臣認定を取得しました。なお、耐火構造は柱や梁など構造部ごとに認定を取得する必要があります。CLT壁は、他の構造部に先駆けて取得しており、2017年11月時点では、自社の試験で柱の3時間耐火に目処を付けたとしています。
熊谷組が大臣認定を取得したCLT壁は、燃え止まり層に石膏ボードや断熱耐火パネルが組み込まれています。木造建築における耐火構造は、芯材の周辺に燃え止まり層を設けることで耐火性能を確保しています。そのため、熊谷組では石膏ボードと断熱耐火パネルを積層し、一般的な石膏ボードのみの積層と比べて厚みを薄くしています。
石膏ボードは内部の結晶水が水に変化する一方、耐火性能の低下によって崩壊が進む危険があります。そこで熱の遮断性能が高く、石膏ボードの崩壊防止に寄与する断熱耐火パネルを組み合わせています。
一方、CLT壁の室内側は表面材を選べるように設計。これにより、天然木や壁紙、塗装など、さまざまな仕様に対応できるようにしています。
CLT壁の耐火構造の大臣認定を受けた熊谷組では、他の主要構造部についても耐火構造の大臣認定取得を目指しています。また、これまでに開発したCLT遮音壁や床と合わせ、遮音性・耐火性を兼ね備えた中大規模の木造建築実現に向けた研究開発を進めるとしています。
1時間耐火を実現し、大臣認定を取得したCLTもあります。大手ゼネコン大成建設は、CLTを表層に利用した耐力壁「T-WOOD®️TAIKA」を開発しました。内部は耐火被覆材を利用しており、CLTで挟む構造になっています。この構造により、CLTの燃焼によって1時間以上燃えたとしても、耐火性能を保持できることが耐火実験で確認されました。
一方でCLTの樹種に決まりはなく、さまざまな種類を利用できるため、木材の地産地消を可能にしています。また、樹種ごとの木目や風合いを活かした、意匠性あふれる空間を創出することもできます。
CLTによる耐火集成木材も開発されています。開発したのは大手ゼネコンの竹中工務店で、「燃エンウッドCLT耐力壁」と名付けられ、国土交通大臣認定を取得しています。耐力壁として適用できる耐火集成木材で、建築物の耐火性能を高めつつ、現しを可能にしているのが特徴です。
竹中工務店が開発した燃エンウッドCLT耐力壁は、CLTに石膏系のセルフレベリング材、カラマツなどを組み合わせています。大臣認定を受けたことで、地震力をカバーする耐震壁としてだけでなく、建物を支える耐力壁としての利用を可能にしています。
同社のCLT耐力壁を利用した場合、柱を減らして建物の自重を支えることができます。これにより、オフィスビルなどで広々とした空間を実現可能です。また、壁の表面を現しにできるため、木が持つ独特の風合いを活かせます。利用者に癒やしを与えつつ、木の質感を活用したデザインとフロア設計を可能にします。
燃エンウッドCLT耐力壁は、荷重支持部(中心部)にCLTを採用し、上から石膏系セルフレベリング材を燃え止まり層として配置しています。そしてスギやカラマツなどの木材を燃え代層として配置し、一枚の耐力壁を作り上げています。
CLTでは、石膏ボードやCLTパネルなどを組み合わせ、1時間あるいは2時間の耐火構造としています。ただし、燃え代設計も考慮する必要があります。なお、2時間の耐火構造にした場合、CLTパネルのみで高層建築物の建築も可能になります。
耐火性を火と熱の両面で考えると木造は必ずしも低いとは言い切れません。中でもCLT木材を使った建造物は燃え抜けず崩壊しない壁や床で組み上げることが可能です。木は熱に対する強度はありますので石膏ボードなどで耐火構造を強化すれば、鉄筋コンクリート造に迫る耐火性を実現できるでしょう。
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